keep one's cool.
2018年9月某日
毎月定例の会社での食事会がある。
役職者が近隣の飲食店に一堂に会し、それぞれの部署の課題や愚痴なんかを酒を酌み交わしつつ話し合う会食だ。いわゆる”飲みにケーション”である。
酒も進み、程よい感じで宴も酣な頃合いで東日本エリアを取りまとめている本部長より、周囲に気遣いをした感じで耳打ちされた
「で、いつから行くの?」
もう、ここまで情報がリークしているのか。。。
「いやぁ、まだまだ未定の部分が多いので早くても来年の春以降ですよ~」
なんて、軽くあしらった。
自分で口に出して思ったが、そうなんだ。
早ければ来年の春には赴任することになる。
同じく常務からは 「パスポート取得しといて、11月に現地視察に行くから」 と言われた。
なにも、まったく準備ができていない。
心の準備が少しできたかな、といった状況だ。
週が明けて、ランチタイムをよく一緒に過ごす総務部長から同じように周囲に気遣いをした感じで耳打ちされた。
「聞いたよ。 今の時点で明確にしておきたいことや質問があれば纏めておいて」
さらに情報のリークは進んでいるようだ。
会社としてもはじめての取り組みなので、過去の事例がなくどのように動けばよいかわからず顧問社労士に確認をとっているといった状況らしい。
いよいよ本格的に動き出したようだ。
総務部長がこう言った。
「でも、あんたよく引き受けたね。。。家族のことや家の事もあるのにね。
すごいね~」
この言葉をどう受け止めれば良いのだろう。
「よく引き受けた」
なんかそう言われるとすごく不安になってくる。
海外赴任を甘くみているのだろうか?
気軽に考えすぎているのだろうか?
価値観は人それぞれなので、この総務部長からするとすごいことなのだろう。
少し、ほんの少しだけ自分の決心が揺らいでいることに気づいた。
怖くて不安になるし、残していく家族のことも心配になる。
失うものも少なからずあるはずだし、それがなにかもはっきりわかっていない。
若かりし頃、ワーキングホリデー制度を利用して海外に一年間旅立つ時は微塵も感じなかった不安感だが、この歳になり守るべきものや責任が増えるとこうも違ってくるものかと痛感している。
自分に都合良く、海外赴任の良い面にしか目を向けないようにしていた。
悪い面を少しでも考えてしまうと決心が簡単に崩れ去ると思ったからだ。
外部からの些細な一言で、こうも簡単に気持ちが揺れるなんて。。。。
冷静になれ。
前だけ向いていれば良いんだ。
これから押し寄せてくるであろう、劇的な環境の変化に無理に抗うことなく、その流れに身を任せていこう。
そうやって揺らいだ決心をもう一度固めつつ歩き続けることが大事だ。